深見東州氏ライブステージ前期の集大成「深見東州ヒストリカルライブステージ」

前回、深見東州音楽プロフィールの記事を書きました。ただ、様々なジャンルを歌う歌手はそれほど多くなく、馴染みが薄いためプロフィールを見てもあまりピンとこない人が多いかもしれません。やはり、実際に歌を聴くことで、プロフィールに書かれてることも深く理解でき、どこがどのように良いのかもわかるものと思います。

そこで、数多くのCDリリースがある中で、過去の声楽コンサートのライブ音源(1991ー2005までの15年間)からピックアップしたCDを紹介したい思います。「深見東州ヒストリカルライブステージ」というシリーズがそれで、Vol.1~Vol.9 まであります。全てを聴くととても長いので、さらにその中の曲から選んだものを2枚組にした「クラシックベストセレクション」から聞いても良いかもしれません。それを聞いて、9枚のシリーズを聞かれるのも良いでしょう。

 

「クラシックベストセレクション」には、日本歌曲や歌謡曲もピックアップされていますが、変に自己主張が強かったり、独自の解釈をするのではなく、原曲の良さを素直に表現したハートに響く歌心を感じます。何度聞いても飽きがこないのは、そのためかもしれません。その「初恋」と「川の流れのように」は、多くの人が歌っている名曲ですが、個人的には深見東州バージョンがベストではないかと思っています。

 

深見東州クラシックベストセレクション!

CD-1 1. マンマ

 2. カタリ・カタリ

 3. 彼女に告げて

 4. オー・ソレ・ミオ

 5. オンブラ・マイ・フ

 6. ラッパを鳴らせ

 7. 恋を感ずる男たちには

 8. おい、道化、わしを困らせるなよ

 9. 夕星の歌

 10. 墓に近づいてはならない

 11. 神よ聞きたまえ

 12. 厩戸皇子のアリア(第一幕)

 13. 厩戸皇子のアリア(第三幕)

 14. プロヴァンスの海と陸

 15. 天使のような清らかな娘が (ヴィオレッタとジェルモンの二重唱)

CD-2

 1. 初恋

 2. 川の流れのように

 3. 遠くへ行きたい

 4. 赤とんぼ

 5. 黎明

 6. つるとコアラの歌声

 7. この世で一番短い歌

 8. 魅惑の宵

 9. キサス・キサス・キサス

 10. ムーン・リバー

 11. 美女と野獣

 12. ダニー・ボーイ

 13. タイム・トゥ・セイ・グッバイ

〈ボーナストラック〉

 14. ダニー・ボーイ (アカペラ)

 15. オー・ソレ・ミオ (アカペラ)

下記のリンクから視聴することができます。

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.1 オンブラ・マイ・フ(1991年~1996年)

1. キサス・キサス・キサス2. オンブラ・マイ・フ 歌劇「セルセ」より 

3. サンタ・ルチア 

4. 毘沙門天の歌~船出乾杯 オペラ ブッファ「七福神来天」より 

5. 鹿島の神を呼ぶ御歌 

6. アテナ女神に捧ぐ 

7. オンブラ・マイ・フ 歌劇「セルセ」より 

8. 赤とんぼ 

9. 里の秋 

10. 旅 愁 

11. 紅 葉 

12. 赤とんぼ 

13. 宇宙戦艦ヤマト 

14. 魅惑の宵 ミュージカル「南太平洋」より 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.2 神よ聞きたまえ(1997年)

1. 黎明 (れいめい) 2. 毘沙門天の歌~戦士のララバイ~勇気と愛の歌~

3. 陽はのぼりぬガンジスより 

4. オー・ソレ・ミオ 

5. 魅惑の宵 ミュージカル「南太平洋」より 

6. お前を讃える栄光の為に 歌劇「グリセルダ」より 

7. セレナータ 

8. 最後の歌 

9. オンブラ・マイ・フ 歌劇「セルセ」より 

10. 墓に近づいてはならない 歌曲「6つのロマンツァ」より 

11. 祖国の敵 歌劇「アンドレア・シェニエ」より 

12. 神よ聞きたまえ 歌劇「魔笛」より 

13. これが最後ではない 歌劇「魔笛」より 

14. この清き世界は 歌劇「魔笛」より 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.3 カタリ カタリ(1998年~2001年)

1. カタリ カタリ 2. マンマ 

3. ヤーヴェ神想 

4. アヴェ・マリア 

5. マリアと共に 

6. 夏の思い出 

7. 北国の春 (中国語) 

8. グラナダ 

9. ダニー・ボーイ 

10. 想い出のサンフランシスコ 

11. 夏の思い出 

12. アリア 憐れみも、誉も、愛も 歌劇「マクベス」より 

13. 二重唱 ラッパを鳴らせ 歌劇 「清教徒」より 

14. 高鳴る調べに 喜歌劇「メリー・ウィドウ」より 

15. オー・ソレ・ミオ 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.4 ヴォルガの舟歌(2001年)

1. ヴォルガの舟歌 2. アリア 夕星の歌 歌劇「タンホイザー」より 

3. 二重唱 おい、道化、わしを困らせるなよ 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より

4. 二重唱 恋を感ずる男たちには 歌劇「魔笛」より 

5. 川の流れのように 

6. 遠くへ行きたい 

7. 初 恋 

8. この世で一番短い歌 

9. ムーン・リバー 

10. 彼女に告げて 

11. 歌の翼に 六つの歌曲Op.34 

12. きよしこの夜 

13. アメイジング・グレイス 

14. タイム・トゥ・セイ・グッバイ 

15. つるとコアラの歌声 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.5 夕星の歌(2001年~2002年)

1. 二重唱 ラッパを鳴らせ 歌劇「清教徒」より 2. 二重唱 恋を感ずる男たちには 歌劇「魔笛」より 

3. 二重唱 おい、道化、わしを困らせるなよ 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より

4. アリア 夕星の歌 歌劇「タンホイザー」より 

5. 厩戸皇子のアリア 第一幕 オペラ「聖徳太子」より 

6. シャンパンソング 喜歌劇「こうもり」より 

7. この世で一番短い歌 

8. 初 恋 

9. 彼女に告げて 

10. オー・ソレ・ミオ 

11. 遥かな友に 

12. 二重唱 手を取り合って 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.6 Time to say goodbye(2002年~2003年)

1. 厩戸皇子のアリア 第一幕 オペラ「聖徳太子」より 2. 厩戸皇子のアリア 第三幕 オペラ「聖徳太子」より 

3. 清らかな娘を授かりました 歌劇「椿姫」より 

4. ヴィオレッタとジェルモンの二重唱 歌劇「椿姫」より 

5. プロヴァンスの海と陸 歌劇「椿姫」より 

6. 二重唱 恋を感ずる男たちには 歌劇「魔笛」より 

7. アリア 夕星の歌 歌劇「タンホイザー」より 

8. オー・ソレ・ミオ 

9. アリア 裏切りに気づくのが 歌劇「皇帝ティートの慈悲」より 

10. 手を取り合って/キャット・デュエット 

11. 初 恋

12. タイム・トゥ・セイ・グッバイ 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.7 美女と野獣(2002年~2004年)

1. マンマ 2. カタリ カタリ 

3. 清らかな娘を授かりました 歌劇「椿姫」より 

4. イエスタデイ 

5. 魅惑の宵 ミュージカル「南太平洋」より 

6. 美女と野獣 

7. 初 恋 

8. 勿忘草 

9. 川の流れのように 

10. 歌の翼に  六つの歌曲Op.34 

11. 帰れソレントへ 

12. オー・ソレ・ミオ 

13. 鉄腕アトム 

14. 実写版 鉄腕アトムの歌 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.8 プロヴァンスの海と陸(2003年~2004年)

1. ヴィオレッタとジェルモンの二重唱 歌劇「椿姫」より 2. プロヴァンスの海と陸 歌劇「椿姫」より 

3. ロドルフォとマルチェッロの二重唱 歌劇「ラ・ボエーム」より 

4. 恵慈と厩戸皇子 オペラ「聖徳太子」より 

5. 厩戸皇子のアリア 第三幕 オペラ「聖徳太子」より 

6. 二重唱 ラッパを鳴らせ 歌劇「清教徒」より 

7. 高鳴る調べに 喜歌劇「メリー・ウィドウ」より 

8. 許しておくれヘラ 

9. グラナダ 

10. オー・ソレ・ミオ 

 

深見東州ヒストリカルライブステージ Vol.9 メサイア(2003年~2005年)

1. 二重唱 おい、道化、わしを困らせるなよ 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より 2. プロヴァンスの海と陸 歌劇「椿姫」より 

3. ヴィオレッタとジェルモンの二重唱 歌劇「椿姫」より

4. 初 恋 

5. 伴奏付レチタティーヴォ 万軍の主かく言いたもう オラトリオ「メサイア」より 

6. アリア されど、その来たる日には オラトリオ「メサイア」より 

7. 伴奏付レチタティーヴォ 見よ! 暗きは地をおおい オラトリオ「メサイア」より8. アリア 暗きを歩める民は オラトリオ「メサイア」より

9. 伴奏付レチタティーヴォ 見よ! 我れ汝らに神秘を告げん オラトリオ「メサイア」より

10. アリア 最後のラッパが鳴るとき、死者は朽ちざるものへと蘇り オラトリオ「メサイア」より 

11. プロヴァンスの海と陸 歌劇「椿姫」より 

12. オー・ソレ・ミオ

13. ダニー・ボーイ 

 

初めて聞かれた方でしたら、深見東州先生の声域がかなり広いことに気がつかれると思います。基本バリトンですが、曲によってはテノールのように聞こえるものもあります。それもそのはずですね。本来の音色は、リリコ・スピント・テナーと言われたそうです。それで、テノールに転向することを、テノールの先生やヨーロッパのテノール歌手から勧められていたそうです。

そのテノール歌手は、「私はバスを4年、バリトンを8年、テノールを6年やっているが、君の声は典型的なリリコ・スピント・テナーだ。簡単ではないが、テノールに転向したらどうだ。きっと、世界的なテナーになるよ。雰囲気も姿も声もテノールのスターそのものだ。私にできたんだから、きっと君にもできるよ。その持ち声がもったいない。真剣に、考えてみないか。」と言っていたそうです。

 

裏声ではなく、綺麗に響かせるなら2オクターブ半ぐらい歌えるそうです。カウンターテナーを入れるなら4オクターブまでいけるそうですが。そこまでの高音の歌声よりは、響きのあるハイバリトン、バスバリトンの歌声に魅力を感じますけどね。

そして、深見東州先生は、他の声楽歌手と違う独自のテクニックもあります。ルネ・フレミングが歌曲を歌う時には、ジャズやポップス、ロック、ゴスペルを歌う技術が隠し味で入っていると言われてましたが、深見東州先生にもその要素があります。そして、能楽で学んだ以下のテクニックも入っているそうです。

「私は宝生流の能の精神性や内面表現を加えます。つまり、成り切りの自在歌唱を行うのです。具体的には、モーツァルトやロッシーニの曲は明るく軽い響きで歌い、ヴェルディの曲は声量を2倍にし、重厚な中にも明るい響のあるヴェルディバリトンで歌うのです。バスティアニーニが、いつもヴェルディバリトンの教科書です。ちなみにワグナーの曲は、ヒットラーの軍服のように歌います。

能楽師は、面(面)をつけ変え、同じ声で歌いますが、心の声で歌うのです。だから役柄に成り切り、観客の心に染み入る内面波動を出し分けるのです。音色や響の波動も、自然に変わります。観客も、そのように聞こえるのです。それが、優れた能楽師の「なりきりの内面芸」です。私は、これを声楽に応用しているのです。」

能楽では男性能楽師が女性の役をするときも、男性の太い声で歌います。それが女性の声のように聞こえるのが一流の能楽師なのかもしれませんね。

 

それからこのシリーズは、1991年から2005年までの長い期間からセレクトされています。それで初期の頃は和製ベルカントですが、声はとても若々しく艶があります。そして後半から本格的なベルカント唱法になっていくところも面白いところです。ここには収録されていませんが、このシリーズの後のオペラ公演ではさらに進化した歌声が聞けます。しかしここまででも、十分に聞き応えのある、素晴らしい歌ばかりが収められています。

 

深見東州先生によるベルカント唱法の定義は「一日8時間、毎日歌っても大丈夫な発声で、背後から息に乗ってカーンとオケを割り、イ母音やエ母音が体を離れて飛んでゆき、一番後ろの席の人にも、ピアニッシモで言葉がはっきり聞き取れるものです。さらに、喉に一切引っかからず、やわらかく軽く歌って、繊細で鋼のように力強く、豊かで遠くまで響くものです。そしてジャズやポップスにも応用できるのが本当です。」になるそうです。

色々なオペラ歌手の歌を聴くと、その言われていることがわかりますね。声が体から離れないで、体の中から声が出ている歌手が日本には多いように思います。

 

あとこのシリーズには、日本だけではなく、世界各地の歌曲も多く収録されてます。歌曲も、やたらハイノートで声量を大きく歌う歌手もいますが、いかにもオペラ歌手という感じにはなりますけど、何か聞いてて疲れてしまいますね。やはり中間音域に魅力があり、母音の割合の工夫や、オペラと同じではなく、その曲にあった歌い方をされる深見東州先生の歌は、すっと耳に馴染むし、心に響く感動があると思います。

もちろんアリアや重唱は、完璧な音程で豊かに響かせて歌われています。喉やお腹に力が入ってないし、私はイタリア語はわかりませんけど、発音もすごく綺麗だなと思います。

 

最後に、深見東州先生の歌に対する考えを紹介して終わりたいと思います。

「そもそも歌とは何かを考えると、まずは言葉が正しく聞き取れて、何回も聴きたくなるように、声を明るく軽く歌い、さらに歌詞に合わせて、感情や音色を豊かに、色とりどりに歌わないと、心に響かないものです。だからそれを心がけ、そういう発声と歌詞と歌唱表現で、人々の心に響く歌を歌っていきたいと、切に願っています。」

 

以下は参考までに、このシリーズを推薦する専門家達の声です。長いので抜粋したものを載せています。

栗林義信氏(東京二期会理事長・ 東京音楽大学名誉教授)

ニューヨークのカーネギーホールや、ロンドン、シドニーなど海外でのコンサートや、国内でのさまざまなコンサートやオペラで、ご一緒させていただきました。その度に、奇想天外で愉快なパフォーマンスで、観客を楽しませる東州さんの姿を見て参りました。そして、歌も演技もステージを重ねる毎に、めきめき上達されるのを実感しておりました。甘く優しい東州さんの声は、聞く人の気持ちを捉えて離しません。ご本人の、類い希なるご努力と集中力と共に、天性の才能というものを私は感じます。

2002年からは、本格的にオペラに挑戦され、「オペラ聖徳太子(聖徳太子役)」、「元禄のトラヴィアータ、ヴェルディ作曲〈椿姫〉(ジェルモン役)」、「大正時代のボエーム、プッチーニ作曲〈ラ・ボエーム〉(マルチェッロ役)」、「雛祭りのフィガロの結婚、モーツァルト作曲〈フィガロの結婚〉(フィガロ役)」などで、大役をこなし、2006年には「リゴレットinジャパン、ヴェルディ作曲〈リゴレット〉」のタイトルロールを、見事に演じきったのですから、驚くべき進歩の早さです。

 

岡山廣幸氏(藤原歌劇団公演監督・昭和音楽大学教授)
今回、氏のCDを聞いて驚いたのは、レパートリーと音域の広さです。ザラストロから、「アンドレア・シェニエ」のジェラールまで歌えるオペラ歌手を見つけるのは、世界でもむずかしいでしょう。プロのオペラ歌手は、普通2オクターブの声を舞台で使います。発声練習では2オクターブ半は出ないと、舞台で2オクターブは使えないでしょう。これは、本格的な声楽を勉強しなければ、不可能です。

 

小山晃氏(音楽評論家)
とにかく、深見東州氏は何と多忙な人なのだろうと、半分は呆れ半分は感心していた。
私が深見氏と直接話を交したのは2006年夏のことだったから、彼の知遇を得てからまだ日は浅いのだが、バリトン歌手、深見東州の演唱は数年前から見聞し、しっかり役を歌い演じる人だ、と考えていた。彼が主宰している世界芸術文化振興協会(IFAC)公演のオペラ舞台でうたった、幾つものバリトン・ロールである。そこで所見したのは、プッチーニ〈ボエーム〉マルチェッロだったり、モーツァルト〈フィガロの結婚〉フィガロだったり、ヴェルディ〈リゴレット〉タイトル・ロールだったのだが、いづれも役作りが明晰であり、バリトン・トーンも柔軟でスピントの利いた声だった。それらの演出は日本的様式美にはめたものでもあったのだが、一瞬見せる所作や見得もよく決っていたから、あちらの声楽を修めた歌い手が、よく日本的な振りを身に付けたものと、えらく感心したのである。が、あとで知れば当然で、彼は宝生流能楽も修め、能役者として本格的な能舞台に何度も立っていた。そして深見東州という人物を少し知ると、マルチな活躍ぶりである。彼の本質が、実業家などであるのは疑うべくもないのだが、書をよくし、画集を何冊も出版しているほどの、画家としての腕と才も一流である。海外にも進出し、学校創設や若い歌い手の育成にも携っている。一体、彼の身体は幾つあるのだろうかと思ったぐらいだった。
無論、バリトン歌手としてもプロフェッショナルである。すでに9CDをリリースしているが、レパートリーもいたって広い。オペラ・アリアを第一として、カンツォーネ、ナポリターナ、日本歌曲にポップスと、ほとんど行くところ可ならざるはなし、の勢いである。それらの歌たちの内面、個性、特長など充分把握し、咀嚼しての歌唱であり、いわば〈深見東州の歌唱世界〉を形成している。まったく、呆れかえるほかに当方の術はない。

 

大貫裕子氏(有明教育芸術短期大学芸術教養学科教授(学科長)・宇都宮短期大学音楽科客員教授)
深見先生の声は、バスからテノールまでの広い音域を持ちます。そして、常に良い声のコンディションを保って歌いこなす、無理のない自然な発声にもとづく美声です。さらに、豊かな表現力に満ちているのです。この全集は、数々のライブ音源の中から厳選された、深見先生の、若々しく素直でさわやかな声から、まろやかな深みのある艶熟した声まで、たっぷり聴ける、まさに「声の歴史」と言える集大成でしょう。

 

大間地覚氏(二期会会員)
私が東州さんと初めてご一緒させて頂いたのは、2004年に行われた、オペラ「大正時代のボエーム、プッチーニ作曲〈ラ・ボエーム〉」でした。最初の稽古で東州さんの声をお聞きした時、それはまさに「驚き」の一言でした。重厚で深みのあるまろやかな響き、伸びがあり明るく音に幅がある輝かしい声だったのです。ブリリアントなその響きは、発声のメソードの正確さから成るものでしょう。歌い手にとって、課題となるパッサッジョ(中音から高音に移行する時の声のかわり目)の技術を、東州さんは見事に会得しておられました。
『音楽』それは字の如く、音を楽しむものです。しかし、音を創り出す立場から思うと、これは大変な努力と研鑽を要する事でもあります。声の創造を身体に託し、聴く人々に感動と希望、夢を与えなくてはならない使命感。多くの舞台人は皆、日々この事に奮闘しています。それを、東州さんは、自由な発想と前向きで地道な努力によって、まるで楽しむが如く笑顔でこなしておられました。
このオペラ「大正時代のボエーム」以降、数多くの舞台をご一緒させて頂きましたが、共演するが故に、その舞台上での東州さんのお姿を、客席から観る事が出来なかったのは、心惜しい事です。そのかわり、開演の30分くらい前から、舞台の袖で瞑想するが如く集中力を高め、いつもの温かくお茶目な姿とは別の、静かなる炎に満ち、傍に人を近づけない強いオーラに包まれた存在へ変わって行く、あの東州さんの様子を目の当たりに見ました。
そうした、一場面一場面が私の人生にとっても、大きな影響を与えてくれました。以前、「レオナルド・ダ・ヴィンチとは、東州さんのような人ではなかったでしょうか」と、申しあげた事がありました。歌、能、絵画等、多くの芸術において多彩な技に秀で、喜びと感動を人々に与えて生きる人生観。それは、言葉では表しきれない偉大なものであります。

 

小林菜美氏(二期会会員)
ステージ袖に、何一つ普段と変わらない表情で、静かに座っておられる東州先生。ひとたび舞台に登場すると、その瞬間から、輝き出されます。先生の歌声が観客の中へ、観客(聴衆)のエネルギーが舞台に戻り、そのエネルギーを受けた東州先生の声が、一段と力を増して観客へ届く・・・。歌い手と観客との素晴らしい循環!
私はヴェルディの「椿姫」で、ヴィオレッタとしてジェルモン役の先生と共演させて頂いた時に、初めてそのようなステージを経験し、驚きと感動を覚えました。
先生は『Seconds Naturale』・・・第2の誕生~生まれた時の自然さを成人してから身につけること~を、歌い手としてだけでなく、舞台人としても体現されています。
ルネッサンス時代の“全能”を目指した先人達が、ギリシア劇の再興からオペラを誕生させたように、先生の表現力の基盤には、物事を幅広く捉え、分析し、その事柄を解釈していく深い探究心が感じられます。だからこそ、先生が演じられたジェルモンには、父親の“本物の慈愛”が描き出されているのかと・・・。しかし、ただただ先生は恣意的にではなく、自然になさっていらっしゃるだけなのかもしれません。

 

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