オペラ「ナブッコ」の見どころをもうひとつ紹介して、この話題を終わりにしようと思います。

それは、故郷を追われたヘブライの民たちが「行け我が思いよ、黄金の翼にのせて!」を、望郷の思いを込めて合唱する場面です。哀愁と希望をにじませたような、なんともいえないような感動的な合唱で、思わず涙が出てしまいます。

ではまず、合唱ではありませんが、イタリアのブルース歌手ズッケロと、三大テノールのパブロッティが一緒に歌っているものを聴いてみましょう。

 

 

オペラの中の合唱では、静かな中にも満腔の思いを込め切々と歌い上げますが、こちらはこちらで、ややポップなアレンジで違った良さがあると思います。

 

さて、こちらはかなり古い録音ですが、トスカニーニが指揮したものです。トスカニーニはスカラ座やメトロポリタン等の音楽監督を歴任した、20世紀前半を代表するイタリア出身の指揮者です。

 

 

ちなみにこの曲は、イタリアの第二の国歌ともいわれているほど、有名な歌になりました。愛国心を沸き立たせるような歌でもあります。この曲を歌うシーンを「ナブッコ」のなかでも一番の見どころと言う人は多いようですね。一緒に見にいったワールドメイトの仲間も、この曲が大好きな人は多かったです。

ただ私の個人的な趣向では、IFACのオペラ「ナブッコ」の中での一番の見どころは、第三幕の、ちょうど「行け我が思いよ、黄金の翼にのせて!」を歌う直前のシーンなのでした。

王座から没落したナブッコが、新しく王座についたアビガイッレに、実の娘の命の嘆願をする場面です。この時のアビガイッレ(マリー・テ・ハプク)とナブッコ(深見東州)の、長い二重唱は、それはもう圧巻でした。

そもそも暴君のナブッコは、自分こそが神だと宣言したとたんに神の怒りにあい、雷にうたれて正気を失います。そのナブッコにかわって王座に就いたのが娘のアビガイッレです。ところがアビガイッレは、実は奴隷に生ませた子どもでした。アビガイッレはそのことを知り、父が本当に愛しているのは、もう一人の娘であるフェネーナであることに気がつきます。

そういう背景のなかで、第三幕ではアビガイッレが、捕囚した異教徒ヘブライ人を死刑にする命令を作ります。そして力を失ったナブッコに玉璽を押すように迫り、押印したナブッコは、敵のユダヤ教に改宗した実の娘フェネーナまでが死刑となることを知るのです。

そこからの激しい、鬼気迫るようなアビガイッレ役マリーテハプクさんのソプラノと、怒りと敗北のすえ、プライドもかなぐり捨て、娘の命の懇願をはじめるナブッコ役深見東州氏のバリトンとのやりとりが、最高の見せ場だったと思いました。

 

ナブッコ

ナブッコから王座を奪い、勝ち誇るアビガイッレ

「おまえは奴隷の娘だ」

「奴隷の娘・・、どこにそんな証拠が・・」といって、証拠の書類を破り捨てるアビガイッレ。

敵わぬことを悟ると、今度はアビガイッレに死刑の取り消しを懇願するナブッコ。

やっぱり、実の娘がかわいいのだというアビガイッレの怒り。

しかし、今や父の命も、妹フェネーナの命も自由にできるという、勝ち誇る気持ちがあり、同時に、涙ながらに哀願する憐れな父を見て心が揺れるアビガイッレ・・。

そんな複雑な二人のやりとりを、深い感情を込めて歌い上げる二重唱に強い感動を覚えます。言葉でうまく表現できませんが、とても移り変わりが激しい役柄を、それぞれ見事に演じ切り、持ち味を出し切ってあったと思います。

「ナブッコ」は、このようにドラマチックな歌唱力と演技力が試される、つくづく難しいオペラだと思いました。

 

ナブッコ

 

ワールドメイトの神事で、ドラマチックな演出をされてきた深見先生には、今回のナブッコ役がぴったりだったかもしれません。そもそもあのマリーテハプクさんの圧倒的な声量に、まったくひけをとらない歌の力量には、改めて感心します。

数年前、ある海外の舞台関係者が、「日本人では、深見氏が世界で通用する」と言われたとか、そんな話を聞いたことがあります。確かにこれを観ると、そのとおりだなと思いますね。

そして、この最高潮で歌った二重唱のあとに、「行け我が思いよ、黄金の翼にのせて!」の合唱が、静かに粛々とはじまるのでした。

天才作曲家ヴェルディの、ドラマチックなオペラが堪能できる傑作「ナブッコ」でした。

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