ハリー王子が創設し深見東州氏が支援するサンタバリー(2)〜HIVとCOVID-19による二重苦〜

前回の記事では、ハリー王子とセーイソ王子が設立した慈善団体サンタバリーの活動について、かなり具体的に書きました。深見東州先生も2014年からこの活動を支援しており、今日まで続いています。

先月の8月9日に日本で開催された「スポーツの力サミット」では、ハリー王子だけでなく、今年7月からサンタバリー会長に就任したソフィー・シャンダウカ氏も登壇され、サンタバリーの活動についての基調講演を行いました。

この方は、モルガン・スタンレー、ヴァージン・マネー、ベーカー・マッケンジー、メタなどの大企業で戦略、法務、オペレーション部門を率いた経験を持ちます。また、米国のバイオテクノロジー企業を設立し、ブラック・ブリティッシュ・ビジネス・アワードの議長兼エグゼクティブ・ファウンダーなど、数々の要職を務める方です。2021年には、卓越した貢献に対し、大英帝国勲章(MBE)を授かります。

そのような非常に優れた方ですが、世界トップクラスの教育を受け、キャリアを積んで来られたのは、アフリカ南部のジンバブエからきた少女である自身に対し、奨学金で教育を受けるチャンスを与え、不利な状況に風穴を開けてくれた多くの支援してくれた方々のおかげですと言われていました。

レソトとボツワナでの目覚ましい成果

レソトとボツワナのHIV有病率は、それぞれ世界第2位と3位になります。ちなみに一位はアフリカ最後の絶対王制と言われるエスワティニ王国(旧スワジランド王国)で、いずれも南部アフリカの国々です。2020年の統計ですが、サハラ以南のアフリカでは、毎週15~24歳の思春期の少女と若い女性の約4200人がHIVに感染しているとの報告があります。

とはいえ、治療プログラムは近年目覚ましい進歩を遂げているとのことです。2021年にレソトでは、HIVとともに生きる人々の90%以上が自分の状態を知り、90%以上が治療に登録し、治療を受けている人々の90%以上がウイルス量を抑えているというUNAIDSの目標を達成したそうです。そのため感染を引き継ぐ可能性が大幅に減少したそうです。

またボツワナでは、成人のHIV感染率は過去20年間で半減し、世界保健機関(WHO)が「目覚ましい成果」と呼ぶ、アフリカで初のHIV母子感染ゼロを達成しました。HIVの廃絶は目前であり、それが可能と思えるほどに目覚ましい成果が出ているとのことです。それらはもちろん、その国のコミュニティによる廃絶への決意と回復力に負うところが大きいとしています。

そのようなコミニティをサポートしてきたサンタバリーも、2006年の設立以来レソトを中心に、2016年からはボツワナの子どもたちや若者たちにも支援を拡大し、活動は年々進化しています。

日本でもエイズ患者は数百名いますが、ほとんど話題にならなくなりました。予防療法も確立されてきて、先進諸国では感染の縮小により、関心も低くなっています。そのことが、アフリカなどのHIV感染の現状に対する自己満足や関心の低下につながることを、ハリー王子は懸念していました。

南部アフリカの若者が求めているもの

サハラ以南のアフリカでは、依然として女性と女児が特にHIV感染の高いリスクにさらされ続けています。その理由は、ジェンダー不平等とジェンダーに基づく暴力によるものが多く、教育、健康、経済的機会を得る権利などにおいて、女性と女児の基本的人権を奪っている現状があるからです。このことがHIV感染のリスクを高め、医療や健康サービスへのアクセスへの妨げにつながっているとのことです。

サンタバリーのプログラムに参加する子どもたちを通じてわかったことは、自分たちが大切にされ、幸せで、将来に希望が持てるようになりたいということでした。自分に自信を持ち、自分の生き方について十分な情報を得た上で選択できるようになりたいのだそうです。

暴力や暴力の恐怖から解放され、安心して生活できること。社会、教育、就労のあらゆる機会に参加し、対等に扱われること。自分自身を守り、生計を立てるための充実した方法を見つけるために必要な学問的・生活的スキルを身につけること。青少年にやさしい保健サービスを利用し、その恩恵を受けることができること。青少年のためのエンパワーメント・プログラム、助成金、職業訓練やその他の形態の教育や訓練を利用できること。自分自身や仲間が公平に扱われていないときに立ち上がり、不公正に対して声を上げ、サービスや治療へのアクセス改善を求めるキャンペーンを行う自信とスキルを身につけること、などなどの声があるとのことです。

それらのことを踏まえてサンタバリーでは、レソトとボツワナの子どもたちや若者たちに総合的な支援を提供しています。青少年に優しい保健サービスへのアクセスの提供、青少年の権利を守りながらスキルを向上させ生計が確立できるための支援、さまざまな情報の提供などを通じて、HIVとともに生きることを受け入れつつある人々のウェルビーイングを強化しているそうです。

地元の医療施設やレソトのマモハトチルドレンセンターでの対面式グループ・セッションの他にも、最近ではラジオ番組、ソーシャルメディア・グループを通じた情報共有、モバイル・ネットワークを通じた情報共有なども行なっているそうです。

HIVと診断された若者の多くは、自分の状態を非常に孤独に感じており、彼らが直面する不安を理解してくれる人たちと交流する手助けをしています。多くの場合、HIVに感染している若者は、コミュニティの他の人にHIVについて話してはいけないと言われ、孤立感を感じ始めます。そこで、このようなプロジェクトによって、HIV感染者の生活を変えることができるのだそうです。

2018年ごろは、土曜クラブと宿泊キャンプからなるサンタバリーの旗艦プログラムも力を増してきて、レソトとボツワナ全土で、HIVとともに生きる4000人を超える10代の青少年を支援してきました。また、さまざまな活動を含めると、毎月40万人の子どもたちの支援をしているそうです。

2020年〜新型コロナパンデミック発生による二重の困難の中で

そのような多くの成果を上げてきたにもかかわらず、ここ数年エイズを終息させるための道のりは後退を余儀なくされてきました。それは、エイズの流行に加え、新型コロナの大流行という苦難に襲われたからでした。

過去2年以上にわたり、若者とその家族は、COVID-19とHIV/AIDSという2つの健康を脅かすパンデミックを乗り越えなければならず、それが子どもたちや若者が直面する多くの社会的課題をさらに深刻化させ、既存の不平等を悪化させてきました。

新型コロナのパンデミックは先進国経済にも深刻な打撃を与えましたが、レソトやボツワナでは、それ以上に大打撃を被り、支援する子どもたちや若者の生活を直撃しました。親や介護者は職を失い、若者は仕事を見つけることができず、子どもたちは学校に通えなくなり、ジェンダーに基づく暴力は急増し、若者の精神的な健康状態は悪化し、貧困は増加の一途をたどります。

レソトとボツワナでは、早期妊娠や意図せざる妊娠、ジェンダーに基づく暴力の増加が報告されました。青少年支援団体からは、失業率の増加や青少年にやさしい情報やサービスの不足により、青少年のメンタルヘルスやウェルビーイングの低下が報告されています。

最も支援を必要としている人々は、多くの場合、最も資金が不足しています。したがってCOVID-19の予防医療を最後に受けることになります。世界的なワクチンの普及は遅々として進まず、あまりにも多くの人々が危険にさらされ続けました。ようやく2022年になってからは、南部アフリカ地域のワクチン接種率も上がってきたそうです。

このような新型コロナ蔓延による脅威の中で、サンタバリーでは対面式とバーチャル・プログラミングをミックスした新しいハイブリッドな活動方法の可能性を見出したそうです。今後の展望としてはテクノロジーを最大限に活用したプログラムの提供を行い、若者たちが安全で力を与えられるように努めていくそうです。地域社会のニーズに対応できるよう、活動のあり方を見直し、適応させ続けているそうです。

スタッフやボランティアの健康、福祉、福利厚生をサポートするための対策も極めて大変だったようです。大切な資金調達にも、予定されていたものが延期になるなど、大きな影響が出ました。深見東州先生が会長を務める国際スポーツ振興協会が支援する、資金調達基幹イベントであるチャリティポロカップも、2020年は中止に追い込まれます。

2021年は規模を縮小し、最大限の対策をとってなんとか実行されました。そのような影響によって、新たな計画を策定して予算を見直すなど、慈善活動の財政的健全性を確保するための措置を講じなければなりませんでした。

2022年〜回復へと向かう活動

それでも2022年ごろからは収入が回復していき、子どもたちや若者のニーズに応えるインパクトのある質の高いプログラムの提供を加速させることができました。ハリー王子も自ら150万ドルの寄付を行ないました。

そのような努力もあって、「クラブ・アンド・キャンプ」プログラムに関する3年間の活動調査の発表では、10~19歳の子どもたちのウェルビーイングが改善されたというエビデンスが示されました。

より多くの子どもと若者が自分のHIV感染状況を知ることができ、性と生殖に関する健康と権利について理解を深めました。サービス、治療、治療とケアの継続についての理解も深め、社会の中で暮らしていくための対人スキル(身の回りの生活、人付き合い、過ごし方など)を身につけるための練習を通じて、子どもと若者の生活が改善されたとのことです。

2022年からは、HIVとともに生きる10~18歳の数千人に治療リテラシーと心理社会的支援を提供する月例クラブと、1週間の宿泊キャンプが再開されました。この年、全国で4000人弱の子どもたちが、地元の医療施設と協力して開催される月例クラブに参加しました。

このクラブは、HIVとともに生きる若者たちがウイルスについて理解し、服薬を守り、サポート・ネット ワークを持ち、健康とウェルビーイングの改善を確実にするためのもので、臨床医の支援を受け訓練を受けたボランティアによって運営されています。

サンタバリーが運営するマモハト・チルドレンズ・センターのキャンプも、再び子どもたちが参加できるようになりました。2022年6月には、400人近い子どもたちが1週間のキャンプに参加し、集中的な心理社会的支援を受けています。

ボツワナではパートナーと協力し、20~24歳の学校に通っていない思春期の少女や若い女性を対象に、HIV感染率の低下と貧困の緩和のためのプログラムを実施しました。3000人以上の思春期の少女と若い女性が登録し、前年度の6倍と大きく増加しています。

また3000人以上の15歳から24歳の思春期の少女と若い女性が、HIV検査とカウンセリング・サービスのためのスクリーニングを受け、約600人がスクリーニング後のフォローアップのために紹介されました。そのような紹介システムを通じて、900人近くが、性と生殖に関する健康と権利、内服薬によるHIVの予防、コンドームや避妊具の配布、ジェンダーに基づく暴力などの臨床サービスにアクセスでき、HIVの新規感染と計画外妊娠の減少に貢献できたそうです。

また、ユニセフとのパートナーシップにより、権利表明が困難な子どもや障害がある若者など、さまざまな理由で本来の権利を行使できない若者に代わって権利実現を支援する代弁者を養成できたそうです。

そのようにボツワナでも、レソトでも、いくつもの成果を上げています。サンタバリーの活動について、やや詳しく紹介してきましたが、それは南部アフリカのHIV/エイズの現状を知るためでもありました。深見東州先生が、2014年から継続してサンタバリーの活動を支援する理由を知るには、まずはその実態を知ることが必要だと感じたからでした。

それとHIVに感染しても、すぐにエイズが発症するわけではありませんが、感染していても症状が出ない場合もあり、無自覚でいることで多くの人に感染させるリスクが生じます。また本人も、ウィルスを抑制する治療を受けていないと、いずれエイズを発症して命に関わることになります。世界からこのような危険なウィルスが撲滅されることを願いつつ、サンタバリーの活動について紹介しました。

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