ハンダ・ファウンデーション(2)〜バッタンバンでの医療福祉〜

ハンダ・ファウンデーション(1)からの続きです。今回は、バッタンバンでの病院運営や医療の実情について紹介します。

ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタル

2013年、ワールドメイト・ファウンデーションがエマージェンシー・ホスピタルを引き継ぎ、「ワールドメイト救急病院(ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタル)」となりました。

2011年までの患者受け入れ数は年間7500人前後でしたが、その後は増え続け、現在は14000人以上の患者を受け入れるまでに大きくなっています。

さらにモービル・メディカルチームが村から村に移動し、毎年6千人以上、多い年は1万人もの患者を無料診療しているそうです。合わせると、毎年2万人を超える患者を診療していることになりますね。

現在、22棟を有する国内最大の救急病院として、運営費の大半はワールドメイト・ファウンデーションが支援し、ハンダ・ファウンデーションが病院を管理・運営しているとのことです。

Mr. Nilesh Patel, a board member of The Handa Foundation, and his wife visited the World Mate Emergency Hospital and The Handa Medical Center. Thanks for all of your support!

The Handa Foundationさんの投稿 2015年2月3日火曜日

ここ数年、地雷による被災者は急減しているそうです。しかし、それに代わるように、交通事故による外傷が急増しているとのことです。カンボジアは感染症の患者が非常に多いそうですが、HIV、マラリア、結核を合わせた数よりも、交通事故による犠牲者の方が多くなっているそうです。

日本とは全く事情が違い、非常に複雑な構造の地雷による外傷もですが、子供達が不発弾を見つけて発火させてしまう事故もかなりあるそうです。また、農機具による事故、木から落ちる事故、工場での事故なども多いとのことです。

Traffic accidents continue to rise... Please be careful out...

Handa Trauma Center - previously Emergencyさんの投稿 2020年1月1日水曜日

カンボジア北西部には外傷を治療する施設が少なく、複雑な外傷を受け入れる病院はさらに少ないようです。そのため、ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルでは、月に1000人以上の外傷患者を受け入れ、そのうち250人以上は、複雑な外科手術や入院治療、何らかのリハビリテーションを必要とする患者になります。

病院には110ものベッドがありますが、生命に危険が及ぶ状態で運ばれてくる患者が多く、そのような命に関わる患者を最優先して受け入れています。

欧米の大学との提携によるスキルの向上

日本の医療事情と違うのは、人口に対する医師の数の圧倒的な少なさもですが(日本の10分の1以下)、医療従事者に提供される教育レベルが、大学在学中も現場でも非常に低いこともあげられます。そのため、十分な教育を受けた医師や看護師を、カンボジアで採用することは難しいとのことです。

そこで、ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルの新しいスタッフは、高い水準を維持するために、1年から3年間の追加のトレーニングを受けます。そのトレーニングは海外や現地の医師、ボランティアによって行われています。

勤務する医師と看護師が、患者のケアに費やす時間と、教室での指導や実地研修を毎週受けるために費やす時間とのバランスに、細心の注意が払われているそうです。

最近では若いカンボジアの外科医が、上級の外科医になるために必要なスキルの習得を目的とする、3年間のカリキュラムも始まりました。

The making of a customized Surgical Checklist with the OT Team - with Dr. Tom Weiser from the Lifebox NGO and Stanford University.

Handa Trauma Center - previously Emergencyさんの投稿 2015年7月21日火曜日

外国人医師も長期的に採用していますが、ハンダファウンデーションは、スタンフォード大学やカーティン大学、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院などから、医師を招聘するパートナーシップを確立しています。

スタンフォード大学からは、外科医、看護師、麻酔科医がチームワークを発揮し、世界保健機関が開発した安全な手術のためのチェックリストを使用することを教えてもらいます。

このチェックリストを使用することで、手術による合併症が30%も減少することが証明されており、このトレーニングをカンボジアのすべての公立・私立病院に拡大することが目標です。

In November of 2018, three of the Cambodian medical professionals who were awarded scholarships from The Handa...

The Handa Foundationさんの投稿 2018年12月2日日曜日

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院とは、カンボジアの医師が、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院で公衆衛生学の修士号を取得するための奨学金が提供されるようになりました。

また、同大学のピーター・ピオット博士からは、ハンダ・ファウンデーションが主催する健康に関する会議や、健康管理に関してアドバイスを頂いています。

Introduction meeting!

The Handa Foundationさんの投稿 2014年7月23日水曜日

カーティン大学は、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士など、さまざまな分野の専門家を養成していますが、その学生たちが週間バッタンバンに滞在し、患者さんやスタッフと一緒に医療体験を積んでいます。そうすることで、学んだことを直接生かすことができる仕組みを作りました。

深見東州先生がカーティン大学の卒業生であることから、特別なパートナーシップになるそうです。

ボランティアスタッフの声

スタンフォード大学外科研修医として、ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルにボランティアで来たナオミ・ガーランド博士は、WHOの手術安全チェックリストを使って、手術の安全性に関する国際基準をどれだけ満たしているかを詳細に調べ、改善に努めました。

彼女か注目したのは、病院スタッフが自分たちの課題について、率直に話す姿勢と、患者のケアを改善するための創造性や献身的な姿勢だったそうです。この点においては、むしろ欧米の多くの病院よりも優れていると感じたそうです。

そして外科医療の向上に尽力する若い専門家たちの環境を見て、カンボジアに対する見方さえも変えてくれたとのことです。

彼女以外にも、専門医療分野の指導、様々なカリキュラムの作成や開発、内科病棟、ICU、救急部の優秀な看護師たちの教育などのために、米国やカナダ、オーストラリアなどの海外から医療の専門家たちがボランティアとして、数週間滞在してきました。

An energetic young girl named Srey Pich was travelling with her family this past April when they crashed their motor...

Handa Trauma Center - previously Emergencyさんの投稿 2016年12月7日水曜日

患者の例も紹介すると、オートバイにはねられた少女が、重症で骨折しましたが、すぐに、ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルに運ばれ、5週間で退院することができました。

この時、本人の家族たちも、加害者も、医療費を支払うことがままならないため、無料で治療を受けています。そのような患者がたくさんいるのだそうです。

また、中には重症で入院し、元気を失う子供もいます。そのような時には、スタッフが童話の本やゲームを持ってきて励ましているそうです。とても温かい雰囲気の病院であることを感じますね。

ボランティアで来た人々は、皆、スタッフの温かさや患者に対する献身的な姿勢、学びへの情熱に感動しているそうです。

米国から来たボランティアによる作品

カンボジア医療体制を変えていくために

そもそもカンボジアの医療体制は、患者の治療費の支払い能力に応じた治療を受けるそうです。もし患者さんが貧しく、支払える十分なお金がないと放置されたり、質の低い施設に移されることも多いとのことです。

そのような中でワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルは、その逆のことをしています。貧困層の患者でも、質の高い治療とサポートを受け、外傷からの回復を目指すことができます。

もちろんそれは、ワールドメイトからの支援があるからできることだと思います。

プノンペンの「シアヌーク病院」での治療も、同じように行い、20年後には周囲の病院も同じような体制に変わってきました。このバッタンバンは、カンボジア第2、第3の都市ですが、ここでもそのように変わる日が、やがて来るためにも努力を続けているのだと思います。

The Handa Foundationさんの投稿 2017年8月10日木曜日

ただ、カンボジアにおける医療のニーズは、すでに一組織が提供できる金額をはるかに超えているのが現状です。ワールドメイト・エマージェンシー・ホスピタルでも、追加のリソースを集める努力が行われています。

その努力により、いくつかの団体からの助成金や、数万ドルに相当する物資や医薬品の現物寄付、ケアとトレーニングを行う数十人の医療ボランティアを得ることができました。

また、カンボジアは高い経済成長を続けており、十分な医療費を払える人口の割合も増えています。そのような富裕層からの寄付なども資金源にしています。

日本と違うのは、生活水準が向上し、より高い収入と機会を享受するようになっても、医療への関心が低く、予防サービスや健康診断にお金をかけるカンボジア人はほとんどいないのが実情です。

そのようにカンボジアの医療現場は、さまざまな課題が山積みだと言えます。求められる医療ニーズに対応するには、非常に多くの資金と人材と時間を必要としています。

Thankful for our local staff and international volunteers; both doctors and nurses, who volunteered their time-off today...

Handa Trauma Center - previously Emergencyさんの投稿 2016年2月13日土曜日

ハンダ・ファウンデーション(3)に続く

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