「タイム・フォー・チェンジ」東京、ロンドン、ヨハネスブルグを結ぶ誓い

先月22日、世界3都市を結んでの「タイム・フォー・チェンジ」レセプションが開催されましたが、動物保護に関して世界が集まる重要会議、ワシントン条約締約国会議に向けて、メーセージ性の濃い内容だったように思います。今回の会議の話し合いに、野生動物たちの絶滅を防げるかどうかがかかっている、そんな感じの印象を受けました。

 

ウィリアム王子はロンドンから、象やサイが、このペースでは近く絶滅しかねない危機に瀕していることを、熱いスピーチで訴えられました。そして、それは同時に地域の貧しい人たちをも苦しめることになるとも、言われていました。

そして日本からは、半田晴久国際スポーツ振興協会会長(深見東州先生)が、日本をはじめ、合法的に野生動物の取引をしているところでも、実はそれが違法取引や密漁の温床になっていることを話されました。

そしてヨハネスブルグから、ワシントン条約締約国会議の事務局長であるジョン・スキャロン氏は、この野生動物の違法取引が、国際犯罪組織の暗躍で、巨大産業になっていると指摘されました。今では、薬物、武器、人身売買に次ぐ、年間200億ドル規模の闇取引が行われているとのことです。

 

薬物、武器、人身売買のような人間に直接被害が及ぶものに比べると、野生動物の違法取引はまだマシだと思う人もいるかもしれませんが、それは、少し考えが浅いようです。

アフリカゾウのような、動物の王者のような存在であり、また、いろいろなアニメやキャラクターなどにもなって、子供達に慕われている象が絶滅するとなれば、これはもうただ事では済まされません。
しかもそれが、象牙の取引のために大量殺戮されていると知れば、もはや黙ってはいられないでしょう。それが犯罪組織やテロ組織の資金源にもなっているのですから、麻薬撲滅や人身売買の撲滅同様に、世界的な大問題として扱われるのも当然の流れだと思いました。

 

日本で野生動物の絶滅というと、私はトキやニホンオオカミを思い出す程度ですが、問題となるスケールや背景が、より凶悪な問題を含み、自然の生態系をも破壊しかねないゆゆしき問題です。種が滅ぶということだけでもよくありませんが、人間が生きるためとかではなく、明らかに間違ったことをして、犯罪を犯していることが原因ですから、これは黙って見過ごして良いことではありません。

深見東州先生も、日本はこの問題から目をそらしてはなりませんと、訴えられていました。

 

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産経新聞2016年10月10日付紙面より

 

では、その気になるワシントン条約締約国会議の結果はどうなったのでしょう。

この会議全体では、60項目を超える提案がなされていました。哺乳類から鳥類、両生類、サメ、植物など、その範囲は、多くの種の保護に及んでいます。

日本では、ニホンウナギの取引規制に関する報道が目立ちました。とりあえず調査するということで、結論は次回に持ち越しになりましたが、ますますウナギが高価になるのを心配する声は多いのではないでしょうか。

 

その話題は置いとくとして、先ほどのアフリカ象に関しては、各国に象牙の国内市場の閉鎖を求める決議が採択されました。これは、動物の保護のために規制を設けるという範囲を超え、締約国の国内の経済活動に干渉することにつながりかねません。それでも、そこまでしなければ象牙の違法取引は無くならないし、このままではアフリカゾウが絶滅してしまうという強いメッセージのように思います。象牙の違法取引は、テロや国際犯罪組織の資金になってるわけですから、それもあって、異例の決議になったようです。

 

ただし、この会議での決議や採択には法的な拘束力はありません。付嘱書に掲載された内容に関しては規制があります。例えば、付嘱書ⅠやⅡに掲載されているものを、許可なく海外から国内に持ち込むことはできません。付嘱書の種類については、こちらを参照してください。

 

付属書Ⅰ
国際取引の影響下で絶滅のおそれが生じている種は、付属書Ⅰと呼ばれるリストに掲載され、国際商業取引は原則禁止されます。ただし、非商業目的(学術研究等)のための取引は輸出国および輸入国がそれぞれ発行する輸出許可証と輸入許可証を得れば許可されます。商業目的であっても、条約締結前あるいは付属書Ⅰ掲載前に取得したものは適用除外され、また飼育繁殖したものは付属書Ⅱ掲載種と扱われるなど例外的に取引が許される場合があります。

付属書Ⅱ
現在絶滅のおそれはないが、将来そうなりそうな予備軍的な種は付属書Ⅱに掲載されます。取引は許されますが、輸出の際に輸出国政府のワシントン条約管理当局の輸出許可証が必要になります。

付属書Ⅲ

自国の政策上、国際取引を規制してその保全を図りたい種は、それぞれの国が付属書Ⅲに掲載することができます。掲載種の国際取引については、輸出国の輸出許可証が必要です。

附属書に載っている生き物については、生きている状態での取引だけでなく、 その生き物の肉や皮や骨製などの部分やそこから作られるバッグなどの製品の取引も制限されることになっています。

また、どの附属書に、どの生き物を載せるかは、2年ごとに開かれる ワシントン条約締約国会議(条約に加盟している国の政府の代表が集まって話し合う国際会議)で話し合われます

 

今回の、各国に象牙の国内市場の閉鎖を求める決議には、そのように法的な拘束力はありませんが、しかし最大の象牙市場である中国も、国内象牙市場の閉鎖に方向転換しました。アメリカもすでにそうしてます。それにはウィリアム王子も両国を訪問し、オバマ大統領や習近平主席と会談するなど、大きな貢献をしてきました。

したがって世界の象牙市場の最大国に、今後日本がなると思われますが、そうなれば、国際社会の風当たりも、一層強くなってくるでしょう。

 

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密漁で殺戮され、牙を持って行かれた像

 

とは言っても、今回の決議には、「アフリカゾウ密漁や違法取引の原因となる市場」という、極めて曖昧な表現の前提条件が付いたそうです。当初の案では、一律に市場閉鎖を求めていたのですが、そのような緩んだ結果になったのは、日本との輸出再開を望む一部の生息国が、強硬に反対したからだそうです。

このように、野生動物の保護と言っても、そこには国の経済や政治的なものを抜きにしては、理想だけでは前に進まないようです。地球温暖化抑制に関する問題も、化石燃料を扱う巨大産業は、政治力やマスコミを利用して、いまだに反対の立場で画策をしています。野生動物保護の世界も、利権が大きく絡むものは、本当に一筋縄でいかないことを改めて考えさせられました。

 

では、今後、日本はどうするのでしょうか。現状、日本の立場としては「アフリカゾウ密漁や違法取引の原因となる市場」には当たらないと主張してますので、国内市場の閉鎖の対象にはならないという認識のようです。

ただ、詳しく書くと長くなるので簡単に書きますが、国内で登録が義務付けられていても、偽装して違法取引の象牙が登録されてしまったり、あるいは、未登録のままの象牙製品の売買なども後を絶たないそうです。

また、象牙の加工品は登録の対象外で、実態もわからないそうです。つまり、法律に抜け穴が多いという指摘があるようです。日本としては、厳格に管理していると主張しても、そのようなことから、違法取引の温床になっているという批判の声は強くなってきているのが現状のようです。

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